日本のシリコンバレー

以前の会社に在籍しているころで、今の会社設立が23年前だから、もう25年以前のことになる。

そのころ、仕事で筑波に何度か行った。

当時在籍した会社でライフサイエンス分野の研究者にヒアリングする必要のある仕事が私に上司から指名されて研究所に通ったのだ。私がキャンパスから去ってそこで働きはじめた浅草の酒問屋のトラック運転手の足を洗い、人並みにネクタイをつける仕事に就いたのは、ようやく20代の終わりで、76年。筑波研究学園都市の開発が着手されたのが60年代終わり。

だからその当時の筑波研究学園都市は、まだ開所から10年も経たず、草ぼうぼうの何もないだだっ広い曠野に最新の施設がポツンポツンと点在する場所で、空漠としてつかみどころのない土地だった。

それが、先週、25年以上ぶりに行ってみると、雰囲気が丸っきり変わっていた。

今私は、バイオマテリアルというライフサイエンス最前線の第一人者の研究者を数十人インタビューする仕事をやっている。その一環で、国立の研究機関の多いこの土地を何度か訪ねる必要があるのだ。

25年ぶりにやってきたつくばは、一口にいうと、清潔で知的な雰囲気の場所になっていた。

道路も広場も空間も整理されて小奇麗になり、お洒落とまではいわないまでも、全体的に垢抜けた雰囲気になっていた。

これは、現在のつくばは、日本のシリコンバレーといってもよい場所になったな、と感じた。私は自分の会社を立ち上げてからしばらくは、仕事で西海岸のシリコンバレーに、ニューヨークとならんでよく行ったのだ。だからあの地域の雰囲気はよく知っている。まず何より気候と空気が素晴らしいのだが、それを基盤に、独特の雰囲気がある。

現在のつくばには、ちょっと、その本場のシリコンバレーに似た雰囲気がある。

いまのつくばには、国公立の研究機関を中心に、民間企業のものを含め、研究所が約300もあるそうだ。

それら全体とそこで働く研究者たちの高層の住居、独立の住居などの建築が、そういう空気を醸成しているのだと思う。

これには、つくばエクスプレスの開通が大きいだろうな。

つくばエキスプレスの開業・開通は05年だから、もう12年が経つ。その東京側の始点終点の北千住やアキバの街の様子の変容は、私たち団塊世代の学生時代や20代の70年前後とくらべると、あり得ないほどだ。

数年まえは、北千住の立派なホールに、フィガロの全幕公演を観にいった。あの圧倒的なソプラノの大隅智佳子が教えている大学の自主公演なのだが(スザンナを大隅が歌った・圧巻!)、オケも含め、なかなか水準が高く、驚いた。

あの北千住でオペラ!と、昔のその土地を知る者なら、決して信じまい。

もう40年以上が経つのだからな。