選択その壱

(承前)

二者択一が迫られた。

→このまま愛し合います

→お風呂に一緒に入ります

○→このまま愛し合います

ガ選バレマシタ

いたずっぽい顔で

楔のように絡む視線。

欲情に潤む黒眼。

耳たぶに或る言葉を囁きながら

窮屈をこじあけて忍び込む指先が

柔らかい芽を捉えて硬い実に育てる。

機械的な操作が膨らみを自由にして、

欲しいままに指がめり込む。

塩の味のする肌をたどった舌が周囲から囲む。

漏れる吐息は、頂上の大胆な征服によって

オクターブが跳ね上がる。

その間にも手先は働き者だ。

秘密を覆う布の上から偵察が入る。

兆しは明らかで隠し立てがない。

いとおしい顔に電気のように快楽が走る。

ためらいもなく外気に晒される肌と肌。

愛撫の必要すら無く一瞬でつながる躰。

剣が若いカモシカのように下から跳ね上がる。

ももを伝う熱量。音を立てて泡立つメレンゲ

凶悪な段差が摩擦係数の実験をくりかえす。

誰にも教えられない本能が

腰を動かし肉を震わせてぶつかりあう。

ヒマラヤの頂点。沸騰。一瞬の拡張。

異性の背中に指たちが軌跡を残す。

叫び声を上げる暇もなく唇を奪い合い、

締め付けと脈動に世界の動きが止まる。

首を絞められたサスペンス女優のように

目が見開かれ、内燃機関が駆動を

ゆるやかに停める。

彫像となったふたりの瞳が平和に微笑む。

まだ固いままの剣を少しずらし動かしたとき

「アン」

と初めて彼女が人間の声を出した……。

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